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万年筆 を使っていると、文字が次のページに映りこんで困ることはないでしょうか。これがいわゆる万年筆の裏抜けと呼ばれる現象です。手帳など比較的紙質が薄いものは、特に使いにくく感じます。ここでは万年筆を使っても裏抜けしない材質のノートや手帳、インクによる改善方法などをご紹介していきます。

そもそも万年筆の裏抜けって何?

万年筆で裏抜けしやすい理由とは?

ボールペンでは筆記の力が強いと、ノートの裏に映ってしまうことが良くあります。万年筆の場合、筆圧がさほどかからないにも関わらず、裏抜けする場合があります。これは、万年筆のインクが液状で、紙を染み透りやすいためです。また、良く書ける万年筆ほどインクのフロー(流量)が多いため、水分を多く乗せることになります。流通する多くのインクは水性であるため、水に弱い紙は大量のインクが出る万年筆に向きません。毛筆で使う半紙のように、完全に裏まで文字が抜けてしまうこともあります。

裏抜けの要因は万年筆・紙質・インク

万年筆の愛好家が少なからず悩まされ続けてきた裏抜けですが、その解決要因としては3つ考えられます。

  • 万年筆自体のインクフロー
  • ノート・手帳の紙質
  • 粘性インク

万年筆からのインクの流量があまり多すぎる場合には、調整してフローを減らすという方法があります。また、中字や太字になるほどインクが多くなるので、裏抜けしやすいノートや手帳には極細字や細字など、いく分ドライに感じられる万年筆を選びます。また、昨今の万年筆ブームの中で、万年筆に合わせた裏抜けしにくいノートなどが出てきています。さらに、インクの質を変えることで、裏抜けを解決できる手段があります。

万年筆の裏抜けを防ぐには

低価格帯の万年筆がおすすめ

万年筆の持ち味は、その柔らかい書き心地。高価格帯の万年筆はペン先に高価な金を使っていますが、こうしたペン先は腐食に強く柔軟性があります。文字の強弱に従ってインクの流量が変わるため、トメやハライなどが表情豊かに表現されます。その一方で、インクが出過ぎるということも。最近、若年層をねらって開発されている低価格帯の万年筆は、いわゆる鉄ペンと呼ばれ、ペン先が合成スチール製です。金ほどの柔軟性がなく、硬質な書き心地ですが、インクの乗りは少なめです。元々、若い世代をターゲットにしているため、ノートなどの筆記に向くように作られています。

細字の万年筆のペン先を調整する

愛用している万年筆の裏抜けが気になる場合には、一度調整をしてもらうと良いでしょう。インクが多く流れると、乾くのに時間がかかりそれだけ裏抜けしやすくなります。極細(EF)、細字(F)であればもとのインクフローも少ないので、調整によって裏抜けしにくくなります。書き味がややカリカリとしている、と感じる万年筆の方が手帳などには向いています。小さな文字が書きやすい万年筆は、それだけにじみもなく水分が少ないということです。手持ちの万年筆の中で候補があれば、調整によって手帳用に使えるかもしれません。

万年筆の裏抜けがしないノートや手帳がある

ノート・手帳の紙質に注意

万年筆は水分の多いインクを、細く鋭いペン先に流すようにして筆記するものです。繊維が多く、粗い紙質のノートには向きません。おしゃれなノートや手帳の中には、わざと光沢のない紙を使っているものがありますが、水分を吸い込みやすく裏映りしてしまいます。一方で、あまりにも表面がコーティングされている紙材のものでは、インクが弾かれ、乾く前にインクがあちこちについてしまう可能性があります。紙厚がある程度しっかりしている用紙で、インクのりが良く、速乾性にすぐれる紙であれば理想的です。

良く目にしているノートにも意外に優れモノが

万年筆に向いた裏抜けしないノート、というと高価格かと思われがちですが、意外と良く目にしている商品があります。学生でも良く使っている、次のようなノートは万年筆でも裏抜けしにくいと人気があります。

  • ツバメノート
  • キャンパスノート
  • ミドリノート
  • アピカノート

やや高額になりますが、手帳では次のような商品の評判が良いようです。

  • スマイソン・ノート
  • クイールノート
  • ライフ・バンクペーパー
  • SOLA
  • グラフィーロ

万年筆のペン先の太さなどによっても、手帳のサイズの好みがあります。手触りなどもあわせて、現物を確かめてみると良いでしょう。

万年筆の裏抜けがしないインクがある

粘度が高いインクは裏抜けしづらい

ボールペンが万年筆に比べて裏抜けしないのは、油性インクだからです。粘度の高いインクであれば、紙への浸透が起こらず裏抜けしません。万年筆では水性インクを使っている人が多いのですが、実は万年筆にも顔料インクがあります。水性インクと比較すると、粘度が高いため、にじまず裏抜けもありません。しかし、その利点こそ、これまで顔料インクがあまり使われていない理由でもあります。顔料インクは水性インク以上に固まりやすく、一度内部で固まってしまうと、水性インクのように水で溶けません。少し放置するだけで使えなくなる恐れがあるため、顔料インクは付けペンのような特殊な場面で使われることが多かったのです。しかし、技術が進んだ今では、超微粒子の顔料インクが開発されています。水性インクと遜色ない使い心地と、裏抜けしづらい品質を両立させています。

水性の速乾インクも要チェック

水性インクの中でも、裏抜けしづらいという評価の高いインクもあります。パーカーのインクは水性の染料インクですが、速乾力が高く裏抜けがないと言われています。裏抜けは水分が浸透することで起こりますが、浸透する間もなく乾けば裏抜けが避けられます。顔料インクにどうしても抵抗がある場合は、一度こちらを試してみると良いでしょう。ただ、乾きやすいという点で逆に、インクが出づらいと感じる人もいます。裏抜けの気になる手帳やノート用として、使い分けするのが良いかもしれません。

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