気温が高くなってくると、さまざまな場所で虫に出くわします。害虫の場合には駆除するために殺虫剤を使用しますが、成分に危険性はないのでしょうか。最近では「殺虫剤のパラドックス」などという聞きなれない用語を耳にすることがあります。
ここでは、殺虫剤成分の危険性や、殺虫剤の効果がある虫の種類など、使用する際の気になる情報について調べてみました。
<目次>
殺虫剤に使われている成分って何なの?
厳しい審査基準がある家庭用殺虫剤
殺虫剤は、人間などに害を与える恐れのある虫の駆除に使用されます。殺虫剤の対象となる害虫は次の3種類に分けられています。
衛生害虫 | 感染症の病原体を媒介、またはアレルギー疾患の元となり健康に害を与える
薬機法で定められた害虫 |
ハエ、蚊、ゴキブリ、ノミ、トコジラミ(ナンキンムシ)、イエダニ、屋内塵性ダニ類(ヒョウヒダニ、コナダニなど)、シラミ |
不快害虫 | 衛生害虫、園芸害虫以外の害虫。不快感・不安を与える。咬む、刺すなどの害を与える | アリ、ハチ、ムカデ、ダンゴムシ、ワラジムシ、カメムシ、クモなど |
園芸害虫 | 家庭園芸で栽培される花や庭木・野菜などに害を与える害虫 | アブラムシ、ケムシなど |
衛生害虫に対しては、薬機法に基づき国の審査を通らなければ、販売できません。医薬品・防除用医薬部外品として承認され、初めて店頭に並びます。
家庭用殺虫剤は専門業者などの使用する薬剤と比較しても、特に安全性に配慮され、直接吸い込んでも即座に重篤な健康被害に結びつかないほどの厳しい審査基準が置かれています。
安全性の高いピレスロイド系が主流
家庭用殺虫剤として特に良く利用されているのは、ピレスロイド系の成分を含むものです。蚊取り線香の原料として知られている除虫菊(シロバナムシヨナギク)に含まれる成分に似た構造の化合物で、昔から殺虫剤の原料として使用されています。
この成分の特徴としては、次のようなものが挙げられます。
・即効性がある
・隠れた虫を排出する
・忌避効果
・人体への害が少ない
・自然分解する
このような特性をもつピレスロイド系としては、アレスリン、フェノトリン、メトフルトリン、トランスフルトリン、イミプロトリン、ペルメトリン etc. といった殺虫成分があります。
殺虫剤の効果がある虫は?
家の中にいる虫にはどんな殺虫剤を使う?
気密性の高い家が多くなったせいで、屋内では一年を通して害虫が発生しやすい環境となっています。部屋別の害虫とその駆除に使う薬剤をみてみましょう。
部屋・スペース | 虫の種類 | 殺虫剤の種類 | 特徴 |
---|---|---|---|
寝室 | ハエ・蚊・トコジラミ・ノミ・シラミ・ダニなど | ハエ蚊用エアゾール、蚊取り線香、電気蚊取り、燻煙剤 | 瞬間殺虫の他、持続性のある殺虫剤が有効 |
居間 | ダニ・ゴキブリ・蚊 | ハエ蚊エアゾール
ゴキブリ用エアゾール ワンプッシュ式蚊取り |
即効性のあるもの
子どものいる家庭ではワンプッシュが便利 |
トイレ | ハエ・蚊・蛆・チョウバエ | ハエ蚊エアゾール
不快害虫用エアゾール 乳剤 |
直接噴霧できるもの
トイレ漕には乳化剤を散布 |
押入れ | ゴキブリ | ゴキブリ用エアゾール
ゴキブリ用撒餌剤 ゴキブリ用捕獲器 |
直接噴霧の他、待ち伏せ型殺虫剤や捕獲器が有効 |
浴室 | ゴキブリ、なめくじ | ゴキブリ用エアゾール
なめくじ用散布材 |
ゴキブリ用の撒餌剤はプラスチック容器のものが比較的有効
なめくじ用は天然成分配合のものを |
台所 | ゴキブリ、ハエ、コバエ、アリ | エアゾール
燻煙剤、捕獲器、アリ用撒餌剤 |
エアゾールは可燃性に注意が必要
エアゾールも待ち伏せタイプがある |
進化する虫よけ型殺虫剤
最近人気があるのが、忌避効果の高い虫よけ剤です。スプレータイプ、吊り下げタイプ、置き型などがあり、アロマ効果や香りで選べる製品も登場しています。網戸などにスプレーして置くだけで、蚊の侵入を防ぎ夜間も安心です。ペットや子供などへの影響も低く、電気代などもかかりません。
火を使わず安全なので、屋外活動用に身に付けて使うものもあります。以前の商品と比較して、効果が高くなっており、各社から豊富な種類が提供されています。
一般にみられる「刺す虫」が対象となっており、蚊のほかにアブやハチなどにも効果があるようです。
「殺虫剤のパラドックス」って言われるけれど……
えっ殺虫剤が効かない虫がいるの?
「殺虫剤のパラドックス」ということばがありますが、これは人間が開発した殺虫剤により、耐性を獲得した虫の進化を説明しています。米国科学アカデミー紀要に発表された論文によると、「害虫の体内に共生する細菌が殺虫剤を分解し、宿主に殺虫剤耐性を持たせている」ということを発見したと報告されています。
多くは、遺伝子の突然変異説が主流となっていましたが、いずれにしても実際に殺虫剤の効果がない害虫が生まれているのです。
細菌の場合は、繁殖のサイクルが他の生物よりも速く、1日の間に世代交代が複数回行われます。殺虫剤への耐性を短期のうちに獲得し、宿主である虫にもその性質が反映されるようです。
驚くべき進化?「耐性ゴキブリ」
前項にもあったピレスロイド系の薬品は、燻煙剤やスプレーなどさまざまな用途に使われています。害虫に対しての高い効果と、ヒトを始めとするほかの生物や自然環境に対する影響の低さが普及の理由となっています。
ところが近年、このピレスロイド系の殺虫剤がまったく効かないゴキブリが出現しています。また他の薬剤についても同様に、長期間使用された場所ではゴキブリが耐性を獲得するのを確認されています。
さらに、撒餌型、待ち伏せ型の捕獲器などについて、一定の期間設置するうちに毒餌を食べなくなるなど情報伝達らしき現象が認められています。ネズミ駆除などでは良く聞かれる話ですが、ゴキブリにも同じような行動が見られるといいます。
殺虫剤をかけても効かない、また毒餌を避けるものを総称して「耐性ゴキブリ」と呼んでいます。
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