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暖かい季節の到来は、気分もあがり、外での活動の機会も多くなります。しかし、キャンプやBBQなどのアウトドアでは蚊やブヨによる虫刺さされが気になります。また、梅雨の季節はダニなど、家のなかでの害虫も出やすくなります。そんな害虫対策として、「家庭用殺虫剤」は私たちの生活で広く利用されています。蚊取り線香や虫よけスプレー、ハエやゴキブリ退治スプレーに燻煙タイプの殺虫剤など、家庭用殺虫剤は入手が簡単で便利なアイテムです。しかし、これらの殺虫剤は本当に安全なのでしょうか。虫を殺す成分なのに人には影響はないのでしょうか。殺虫剤の安全性と基本的な使用方法、注意点について紹介します。

そもそも殺虫剤って、使っていて安全なの?

■殺虫剤を使用する様々なケース

蚊によるデング熱の感染例が多く報告されたことから、虫よけスプレーをはじめ、蚊を寄せつけない虫よけグッズや殺虫剤が多く売れるようになったそうです。病気を媒介する虫やダニから身を守るには、虫を寄せ付けない「予防」が大切です。では、私たちの生活のなかで、虫よけスプレーや殺虫剤を使用するケースとはどのような場合があるのでしょうか。

場所 虫の種類 殺虫剤のタイプ
家の内部

(キッチン、リビング、寝室 など)

蚊、ハエ、ゴキブリ、ダニなど 蚊取り線香、電気式蚊取り、臭い式ハエとり、粘着ゴキブリとり、燻煙式殺虫剤、ホウ酸団子
家の外部

(庭、ベランダ など)

蚊、ハチ、ブヨ、草花の害虫など 蚊取り線香、ぶら下げ式虫除け、殺虫スプレー、家庭菜園用殺虫剤
アウトドアー

(キャンプ、BBQ、スポーツ、公園など)

蚊、ハチ、ブヨ、毛虫、ムカデなど 虫よけスプレー、蚊取り線香、携帯用電気式香取、殺虫スプレー

殺虫剤は虫の種類、使用する場所、用途によって様々なものが発売されています。目的に合った殺虫剤を使用しましょう。

■殺虫剤の安全性試験とは

殺虫剤を使用することで、私たちは嫌な虫刺されや、害虫による被害を防ぐことができます。しかし、虫を殺す威力のある殺虫剤なら人間に対しても、なんらかの危険性があるのではないでしょうか?私たちがドラッグストアやスーパで購入できる「家庭用殺虫剤」は以下のように管理されています。

1)医薬品医療機器等法(旧薬事法)に基づき、効能・効果を確認した試験結果による製造販売の認可が必要
(2)安全性に関して、急性毒性、刺激性、アレルギー性など、数多くの安全性試験結果を厚生労働省に提出、認可が 必要
(3)アブラムシや毛虫などの園芸害虫の駆除を目的にした園芸用殺虫剤は、農薬取締法に基づいて管理されている

■家庭用殺虫剤に含まれる主な成分について

家庭用殺虫剤の安全性については、厳しい検査や試験があることがわかりました。では、実際に殺虫剤や虫よけ製品に使用されている成分とはどのようなものでしょうか。私たちの健康への影響が気になります。日本で発売されている殺虫剤、虫よけ剤に使われている成分は以下のように分けられます。

成分名 殺虫/虫よけ製品のタイプ 特徴 / 効果 安全性
ピレスロイド系 蚊取り線香

殺虫スプレー

電気式香取

・家庭用殺虫剤に最も多く使われている

・虫に対して殺虫効果がある

・虫を寄せ付けない効果がある

・人に対しての毒性は低い
ディート 虫除けスプレー ・虫を寄せ付けない効果がある

・虫除け効果は高い

・安全性は認められているが、神経障害、皮膚炎などの薬害報告がある

・濃度や使い方に注意が必要

イカリジン 虫除けスプレー ・近年日本で使用されるようになった

・安全性が高い

・虫除け効果は低い

・安全性が高く、幼児への使用も可能

◎昔からの使われている殺虫成分「ピレスロイド」
昔ながらの殺虫剤 / 虫よけ、といえば蚊取り線香ですね。ピレスロイドは日本で発売されている殺虫剤/虫よけ剤で、一番多く使われている成分です。その効果は、殺虫成分で虫(蚊)を駆除することができます。また、忌避成分(虫よけ効果のある成分)もあり、殺虫と虫よけ、両方の用途で使用することができます。ピレスロイド系の殺虫成分は、虫の神経には作用しますが、人および哺乳動物への危険性は少なく、安全であるとされています(分解酵素の働きや虫と哺乳動物の体格差が影響)。

◎虫よけ効果のある代表的な成分は「ディート」
外での活動の際に便利な虫よけスプレーと呼ばれる製品のほとんどは、忌避成分(虫よけ効果のある成分)としてディートが使用されています。ディートに虫が寄り付かないのは、虫がディートへの付着を嫌うからとされています。ディートは虫よけ効果が高く、正しく使用すれば虫刺されを防ぐことができます。しかし、薬害の報告(神経障害や皮膚炎)もあり、乳児や幼児への使用は禁止または控えるよう警告されています。

◎近年日本で使用されるようになった「イカリジン」

ディートの安全性を問題視することもあり、安全性の高いイカリジンと呼ばれる忌避成分を使用した虫よけ製品が日本でも発売されるようになりました。ディートと比べて虫よけ効果は低いものの、副作用がなく、乳児や幼児への使用可能な製品が発売されています。

殺虫剤を誤飲した場合、どのようにすればいい?

■殺虫剤の誤飲を避けるために取るべき行動

人間に対する殺虫剤の毒性は低いものの、間違った使用や、乳児や幼児が誤飲してしまった場合には適切な処置が必要となります。まずは、誤飲を引き起こさないことが大切です。

殺虫剤の誤飲/誤食事故のケース

対象者 誤飲誤食の多い殺虫剤 対策
乳児 / 幼児 蚊取り線香、蚊取りマット 乳児や幼児は下にある物に目線がいきます。目に入るものは何でも触ってしまうのも、乳児や幼児の特徴です。蚊取り線香や蚊取りマットは床置きで使用しないことが鉄則です。
ペット(犬や猫) ホウ酸団子 家のなかでペットを飼っている場合、ホウ酸団子は使用しない。スプレー式、燻煙式など別の害虫駆除方法にする。しかし、ペットが臭いを嫌がる場合は控える。

赤ちゃんや小さな子供、あるいは室内でペットを飼っている場合、化学薬品を成分とした殺虫剤の使用は控え、ハッカ水、ティーツリーオイルなど、自然由来の虫よけ方法を選んだようがよいでしょう。

■もしも誤飲した場合!具体的な対処方法

どんなに注意をしていても、誤飲/誤食事故が起こる場合があります。もしも、殺虫剤を飲んだり、食べたりした場合は、次の様な処置が必要です。

誤飲誤食の多い殺虫剤 毒性 症状 対応
蚊取り線香、蚊取りマット 毒性は低い

なめたり、マットを数枚食べても心配はない

(大量に食べると)嘔吐、下痢、腹痛、皮膚炎、アレルギーを引き起こす 症状がなければ問題ない

症状がある場合は病院へ

液体蚊取り 毒性あり

(石油系溶剤が含まれている)

喉や胃が熱くなる、吐き気、嘔吐、気管に入ると肺炎を起こすので危険 症状がある場合はすぐに病院へ

吐かせてはいけない

ホウ酸団子 毒性あり

(ホウ酸の含有量による)

吐き気、嘔吐、激しい腹痛、下痢、皮膚に紅斑が出る、痙攣など 大量に食べた場合は病院へ
防虫剤(ナフタリン) 毒性高い 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢

発熱、発汗など

なめただけなら様子を見る

少しでも食べたらすぐに病院へ

牛乳は飲ませない

殺虫剤を使用する・処分するならこれだけは注意!

■殺虫剤を使用するときの基礎知識

家庭用殺虫剤は虫を殺す作用はありますが、人やペットなどの動物を死に至らせることはありません。しかし、使用方法を間違えると、皮膚炎や神経障害、そして中毒症状を引き起こします。家庭用殺虫剤は、虫の駆除を目的に作られています。それ以外の用途には使わない、そして使用する際は必ず使用上の注意を読み、正しく使いましょう。
(1) 殺虫剤は人や動物に向けて噴射しない。
(2)屋内で殺虫剤を使用する時は、必ず部屋の喚起をし、床やカーペットの掃除をする。
(3)必要以上の量を使用しない。
(4) 乳児や幼児、ペットのいる家庭では蚊取り線香や蚊取りマットなど、置き型タイプは使用しない、ホウ酸団子は使用しない。

■家庭菜園での殺虫剤使用の気を付ける点とは

殺虫剤や農薬は“有毒”のイメージがあるため、家庭菜園で育てた野菜や草花に使うのは抵抗があります。

しかし、害虫が大量発生した場合には、市販の殺虫剤を正しく使い、害虫を駆除することが適切のようです。そして最近では、環境や人体にやさしい、主成分が天然物質由来、植物成分由来といったエコロジー製品も多く発売されています。

<天然物質由来の家庭園芸用殺虫剤>

薬剤名 有効成分 効果
ハッパ乳剤 なたね油 ハダニ、アブラムシの抑制

(うどんこ病の予防/治療)

ペイベニカ乳剤 ピレトリン

(除虫菊から抽出)

アブラムシ類、アオムシ、コナガ等の駆除
アーリーセーフ ヤシ油由来成分 アブラムシ類、コナジラミ類、ハダニ類、ミカンジラミの幼虫(うどんこ病の治療)の駆除
バシレックス水和剤 BT菌

(バチルス・チューリンゲンシスという細胞)

チョウやガの幼虫(アオムチ、ケムシ)の駆除

市販の家庭園芸用殺虫剤は使用方法を必ず良く読んで、決められた方法で散布します。霧吹きを使い、葉の裏、葉の付け根に散布します。

■余った殺虫剤の処分はどうしたらいいの?

夏の終わりに、「ベランダの隅に転がっている殺虫剤、どうやって捨てたらいいのかしら?」と疑問に思う人は多いかと思います。殺虫剤を発売する大手メーカーのウェブサイトでは、使用済み、中身の残った殺虫剤の処分方法を紹介しているので、参考にすると良いでしょう。また、殺虫剤の捨て方は、その形態(スプレー缶、電池式蚊取りなど)によっても異なり、住んでいる町によって様々です。住居のある行政機関(市区町村役場)に問い合わせることをお勧めします。

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