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「石鹸」と聞いてイメージするのは、白くて四角い固形石鹸ではないでしょうか。しかし、私たちの生活で使用される洗浄剤のほとんどは液体の合成化学洗剤です。キッチン洗剤に、ボディソープや洗顔フォームなど、使い勝手もよく様々な種類が発売されています。ところが今、昔ながらの「石鹸」の魅力が見直されています。特に厳選された素材を使い、製造方法にこだわった石鹸は、アレルギーやアトピーなど肌のトラブルの症状改善も見られます。でも、「そもそも石鹸ってどのようなもの?」「洗剤と何が違うの?」「本当に安全なの?」と疑問も多いもの。石鹸の成分構成、石鹸のルーツ、肌トラブルにもお勧めの石鹸など、石鹸について紹介します。

石鹸とはどのようなもの?何でできているの?

石鹸より、液体ハンドソープやボディウォッシュのほうがよく使われている、と感じる方は多いのではないでしょうか。液体ハンドソープが日本で発売され始めたのは1980年代後半です。そして1996年、O-157による食中毒が流行して騒動となったのをきっかけに、わたしたちの生活のなかで、手や体を洗う洗浄剤として今では主流になっています。しかし、最近では昔ながらの固形石鹸が、健康や自然環境に“やさしい”という理由から、石鹸を使う人が増えているようです。なぜ石鹸は肌や環境に“やさしい”のでしょうか。その理由は、石鹸のルーツと石鹸の材料から知ることができます。

■石鹸の由来、ルーツについて

石鹸がこの世に生まれたのは、なんと紀元前にさかのぼります。そして石鹸の正体はその名前の由来でも知ることができます。「石」は硬いもの。「鹸」は塩水が固まったアルカリの結晶のことです。つまり、石鹸とはアルカリのかたまりということになります。

また、英語で石鹸をSoap(ソープ)と言いますが、これは古代ローマ、Sapo(サポー)の丘で作られたことに由来します。

<石鹸の歴史>

紀元前3000年頃 古代ローマ、サポー(Sapo)の丘の神殿で、神様のお供えとして焼いた羊から落ちた脂肪が木の灰に混ざってできたのが石鹸のはじまり。※灰はアルカリ性
8世紀頃 スペインで動物性脂肪と木灰(アルカリ)を混ぜ合わせ、本格的に石鹸が作られる。
12世紀頃 フランスのマルセイユ、イタリアのサポナなどで、オリーブ油と海藻の灰(アルカリ)を混ぜ合わせた石鹸が作られる。
18世紀頃 産業革命のころ、天然のアルカリ(自然界からの灰)では石鹸の生産がおいつかなくなり、アルカリを合成で作りだすことが成功する。食塩から硫酸ソーダを作り、石灰と混ぜ加熱する方法。
19世紀頃 ポルトガルより、日本に初めて石鹸が伝わる。

つまり、石鹸とは古来より自然界に存在した、油脂(動物の油)とアルカリ(灰)を原料として作られました。現在の石鹸もその基本は同じです。石鹸の定義とは、脂肪酸+アルカリが中和して結合した化合物です。

■手作り石鹸で石鹸の材料を知ろう!

石鹸が何から出来ているかは、石鹸を手作りするとわかります。

材料 準備するもの
オリーブオイル 200g

ココナッツオイル 150g

パームオイル 150g

苛性ソーダ 65g

精製水 175g

精油(アロマオイル)約10ml

はかり、紙コップ、温度計2本、湯煎用なべ、

計量カップ(耐熱ガラス製)、ボウル(耐熱ガラス製)2個、

泡だて器、ブレンダー、スプーン、ゴムべら、石鹸型(牛乳パックなど)、カットナイフ

段ボールまたは発泡スチロールの箱、保温用タオル

ゴム手袋、マスク、ゴーグル/眼鏡(目の保護用)

※鉄、アルミは苛性ソーダに反応するため、使用はNG

ガラス、ほうろう、ステンレスを使用する

(1)  はかりを使い、材料の量をはかる。耐熱ガラス容器に精製水、紙コップに苛性ソーダを入れる。
(2)精製水の入った耐熱ガラス容器に、苛性ソーダを入れ、スプーンで混ぜ合わせる。
<注意!>刺激臭が発生するので必ず喚起をする。苛性ソーダを混ぜた精製水は、温度が60度以上に上がるので火傷に注意する。
(3)苛性ソーダが全て解けたら、苛性ソーダ水を冷ます(冷水を入れたボールに入れ40度前後にする)。
(4)オリーブオイルとココナッツオイルをボウルに入れ、湯煎にかけ温度を苛性ソーダ水と同じ温度に上げる。
※苛性ソーダ水とオイルの温度は38度から42度の間で合わせる
(5)温度が同じになったら、苛性ソーダ水をゆっくりとオイルに入れ、生地が白っぽくもったりとするまで、泡だて器で20分ほど混ぜ合わせる。 ※温度が下がってきたら湯煎にかけ40度前後を保つ。
(6)(5)にアロマオイルを加える。2分程おいてなじませる。アロマオイルの量が多いと分離してしまうので、オイル+精製水の2%以下の量になるよう調整する。
(7)ゴムベラを使い、型に石鹸生地を流しいれる。型をトントンととし、空気を抜く。保温のためタオルでくるみ段ボールか発泡スチロール箱にいれ保管。24時間寝かせる。
(8)硬さを確認する。柔らかいときはさらに1日〜2日保存する。ほどよく固まったら、型から出して1〜2日乾燥させ、切り分ける。
(9)切り分けた石鹸は、日の当たらない乾燥した場所で更に乾燥させる。4週間程度でオリジナル石鹸が完成。

石鹸で洗顔をするのはNG?

■正しい洗顔とは?健康な肌のために知っておきたい洗顔と石鹸の関係

最近、「肌の調子が良くない」と感じることはありますか。その人の肌質や生活習慣、そして気候によっても肌の状態は変化します。でも、肌の美しさは、その人の見た目を印象づけます。石鹸は、健康でキレイな肌に関係があるのでしょうか?

肌トラブルの多くは、洗顔による顔の洗い過ぎが原因
これは“洗浄剤”が肌の潤いに必要な皮脂と水分まで洗い流してしまうからです。肌は、肌本来の力で水分と油分を保ち、それが肌表面を覆うことにより、外からの刺激(汚れや細菌、乾燥など)から守っています。その水分と皮脂が洗い過ぎにより奪われると、肌のバリア機能(抵抗力)が落ち、肌のトラブルがおこります。

水(ぬるま湯)洗顔だけでは、汚れやばい菌を落とせない
では、水やぬるま湯だけの洗顔をすれば、肌の健康は保たれるのでしょうか。乾燥肌の場合、石鹸や洗顔フォームでの洗顔回数を減らし、朝はぬるま湯で洗い、夜は洗浄剤を使いメイクや汚れを落とした方が良いとされています。その理由は、水だけの洗顔では汚れやばい菌を十分に落とせないからです。

切な洗浄力の石鹸や洗顔フォームを選ぶ
つまり、健康で美しい肌を保つためには、肌の皮脂や水分を奪わない+汚れ、ばい菌は落とす性質を持った洗浄剤が理想的です。そして、石鹸はこの理想に合った成分で作られているのです。

■石鹸派?液体フォーム派?その違いを徹底比較!

石鹸 洗顔フォーム / 液体ソープ
主な構成成分 脂肪酸ナトリウム / 脂肪酸カリウムなど、天然界面活性剤 合成界面活性剤

※合成界面活性剤の種類は様々あり、製品ごとに異なる

性質 弱アルカリ性 弱酸性(製品による)
特徴 皮脂汚れは「酸性」の性質をもつため、弱アルカリ性である石鹸を混ぜると中和反応が起こり、汚れが落ちる。肌への刺激も少なくなる。 肌が弱酸性であることから、同じ性質である弱酸性のほうが肌に優しいとされている。しかし、酸性同士では汚れを落とす力が弱い。そのため、汚れを落とす成分として合成界面活性剤が使われている。

石鹸と洗顔フォームでは、成分として使われている物質が大きく異なります。洗顔フォームに使われる合成界面活性剤は種類が多く、製品によって配合されるものは違いますが、石鹸との明確な区別は石鹸素地(=脂肪酸ナトリウム/脂肪酸カリウム)以外の物質でできている、ということです。

■固形石鹸と液体石鹸はどう違うの?

石鹸には、固形タイプ液体タイプがあります。ボディソープは液体石鹸ではありません。液体石鹸は石鹸素地(脂肪酸カリウム)を構成成分として作られています。そして、ボディソープはそれ以外の成分でできています。

固形せっけん 液体せっけん
構成物質 脂肪酸ナトリウム 脂肪酸カリウム
製品 固形せっけん:洗顔用、ボディ用、洗濯用など せっけんシャンプー、ボディソープ(液体せっけん)、

食器用液体せっけんなど

特徴 梱包が紙であることが多く、エコロジー 食器用洗剤やボディソープは、液体のほうが便利

アレルギーやアトピーの人も使える石鹸ってある?

■肌への刺激は禁物!でも石鹸での洗浄は必要なの?

アトピー性皮膚炎やアレルギーを持つ人にとって、「お湯すらも刺激に感じる」ほど、肌がとてもデリケートな状態です。そのため、石鹸や液体ソープを使っての洗浄を控えることが推奨されるケースもあります。アレルギーやアトピーを悪化させる原因とは?対処法はあるのでしょうか。

<原因>
(1)アレルギーやアトピーを引き起こす原因は、洗浄による刺激
洗浄剤の汚れを落とす力は、肌に必要な皮脂と水分も洗い流します。また、洗浄剤に含まれる合成界面活性剤や添加物(香料や防腐剤)は、アレルギーやアトピーの症状を持つ人にとっては大きな刺激となります。

(2)黄色ブドウ球菌やカンジタなどの菌による皮膚炎
洗浄のし過ぎがアレルギーやアトピーによくないという指導から、洗浄剤を使わず、水(ぬるま湯)だけで洗っていると、菌の繁殖と感染症が危ぶまれます。黄色ブドウ球菌は普通に肌に存在する菌ですが、アトピーの人はこの菌の保有が比較的多いと言われています。

(3)肌を保護する抗菌ペプチドが少ないため肌免疫力が弱い

肌には、抗菌ペプチドという皮膚の常在菌(肌を守る役割)が備わっています。しかし、アレルギーやアトピーの人は、生まれつき、あるいは後天的にペプチド少ないため、肌の抵抗力が弱くちょっとした刺激に反応してしまうため、皮膚トラブルを起こしやすいと言われています。

 

<対処法>

(1)洗浄剤を使って適度な頻度で洗浄する

水やぬるま湯だけの洗浄では、黄色ブドウ球菌の繁殖が防げないため、洗浄剤を使っての洗浄が必要です。しかし、洗い過ぎは刺激になり、肌に必要な皮脂や水分を奪い乾燥をひきおこすので、洗う頻度は少なめにします。

(2)肌に刺激の少ない洗浄剤で洗浄する

アトピーやアレルギーの肌に、刺激は禁物です。肌への刺激が少ないマイルドな洗浄剤を選んで使用し、洗浄は優しく素早く行い、すすぎを十分に行います(洗浄剤を肌に残しておかない)。

■肌にやさしい石鹸。アレルギーやアトピーの人にお勧めの石鹸とは

アトピーやアレルギーの肌には、刺激の少ない洗浄剤を使うことが重要です。石鹸が肌にやさしいと言われるのは、洗顔フォームや液体ソープのように合成界面材を使用していないからです。しかし、石鹸にも種類があり、全てが肌に優しい素材で作られているわけではありません。肌への刺激が少ない石鹸を選ぶなら「無添加せっけん」がお勧めです。

◎無添加せっけんとは
石鹸素地のみでできている石鹸のことで、合成界面活性剤や化学合成の添加物を一切使用していない石鹸が無添加せっけんです。しかし、無添加の明確な決まりがないため、「○○無添加」や「植物由来成分配合」など、100%無添加と誤解される製品も少なくありません。

<無添加せっけんと一般的な石鹸の成分表(例) 赤字が化学合成添加剤>

無添加 モリンガ種子オイル、パーム核油、ココナッツ油、月桃精油、海洋深層水、精製水、水酸化Na
一般的な石鹸 石鹸素地、チャエキス、アロエエキス、ホホバ油、シア脂、グリセリン、フェノキシエノタール、EDTA

エチドロン酸、青色3号、香料

しかし、無添加せっけんとはいえ、使う人によって油脂成分としてオリーブオイルが合う、ヤシ油は合わないなど効果は様々です。素材や使い心地(保湿感がほしい、サッパリしたいなど)の合う石鹸を選ぶには、ネットなどを利用し、情報を集め、実際に使ってみて合う、合わないを選別していくしかないようです。

石鹸を誤飲したときにはどうする?

■気を付けて!赤ちゃんや小さな子供と石鹸の取り扱いについて

赤ちゃんや小さなお子さんは、目の前にあるものを口に入れる習性があります。石鹸も例外ではありません。乳児や幼児、また、ペットのいる家庭では、石鹸の取り扱いに注意しましょう。

(1)乳児や幼児、ペットのいる家庭では、石鹸が視界に入る、手が届く、場所には置かない

(2)洗面所やお風呂場での使用は、蓋の閉まる(こどもが開けずらい)ケースに入れる、または高い所に置く

(3)石鹸を食品用のタッパなどに入れない

■もしも石鹸を誤飲したときに。とるべき対処とNG行動

石鹸を誤飲したときの対処の流れ

水で口をすすぎ、牛乳を飲ませる(胃の保護)

1時間ほど様子を見る

症状あり

症状なし

嘔吐、下痢、唇のはれ、腹痛、吐き気

中毒の可能性なし

中毒の可能性あり!病院へ!

NG行動:無理に吐かせるのは、気管に入り、肺炎を引き起こす場合があるので控える

石鹸は構成成分が天然由来のものが多いため、誤飲しても比較的安全と言えます。しかし、石鹸を大量に食べてしまった、または体質によってもアレルギー反応などを起こす場合もあるため、誤飲を防ぐ対策が必要です。

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