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クールジャパンということばを良く耳にするようになり、日本の伝統的な文化が見直されています。本格的な和服は敷居が高いけれど、気軽にキモノを楽しんでみたいという若い女性の間では、カラフルな浴衣がブームとなっています。毎年花火の季節がくると、たくさんの華やかな浴衣姿を目にしますよね。今年こそはチャレンジしたい、そう思っている人も多いのではないでしょうか。簡単とはいいつつも、洋装とは違って浴衣の着方を知っている人はまだまだ少ないようです。ここでは浴衣の歴史や帯の結び方、男性と女性の着こなしの違いなど、浴衣を格好よく身に付けるための知識を学んでいきましょう。

浴衣初心者なら読んでおきたい、浴衣の着方&帯の結び方(巻き方)

ポイントを押さえればくずれずカッコいい!


まず、女性の和装で厄介なのは「おはしょり」を作る部分でしょう。男性や子どものように「つい丈」であれば楽なのですが、長い丈のものを自分に合わせて作り込む必要があります。浴衣を着る手順を簡単に見ていきましょう。
1.   浴衣に袖を通し、背中の縫い目がちょうど背中の中心を通るようにはおる
2.   えり先から約20cm上を持ち、裾がくるぶしの丈になるように持ち上げる
3.   左が上になるように重ねる
4.   腰ひもを結ぶ
5.   身八つ口から手を入れ、前後のシワを伸ばす
6.   ひもを使って襟を整えながら結ぶ
7.   後中心線を引っ張りシワを伸ばしてから伊達締めをしめる
ポイントは裾をやや絞り気味に決めることです。あまりすぼめ過ぎると歩きにくくなるので、ほんの少し足を開いて行なうと丁度良くなります。後ろから見た時に、広がっていたりラインが四角いとしまりがありません。浴衣の場合は、えりはあまり抜かず、こぶしひとつくらいを意識します。襟元はきちんと詰まっていると初々しくなります。フォーマルの着物はぞうりに裾がかかる程度の長さにしますが、浴衣は足首がのぞくくらい短めを意識します。
腰ひもや胸ひもは、ユナベルト、コーリングベルトなど伸縮性のある便利なものが出ているので、着物に慣れていない人はそちらの方が楽に着られます。

作り帯はお子ちゃまチック 半幅帯にチャレンジしよう


今は大人用の結び帯があり、差し込むだけというものもたくさんあります。しかし、見る人が見れば、すぐに作り帯かどうかわかってしまうもの。浴衣用の半幅帯は、袋帯や名古屋帯ほど扱いが難しくないので、練習すればすぐに結べるようになります。
ここではもっともオーソドックスで簡単な、文庫結びを見ておきましょう。身体の前側で結んでぐるっと回せばOKです。
1.   身体の前で手(リボンの真ん中の部分)を50cmほど残し、身体にふた巻する
2.   巻終わったたれ(リボンの部分)を斜めに折り上げて、たれが上に出る様に結ぶ
3.   帯の模様や色の出方により巻だたみかびょうぶだたみとする(たれの長さは好みにもよるが一般的には45cmほど)
4.   帯幅の中央に山をつくり、両サイドを折り上げて山ひだをつくる
5.   手を上からかぶせふた巻きして引っ張る
6.   手を胴に巻いた帯の内側に入れ下から引き出す 余りは内側に折り込む
7.   羽根を広げて整える
8.   手の部分を持ち右方向にずらして後まで回す
9.   帯板を入れる
帯を結ぶポイントは、下側をもって引くこと。全体を引っ張っても、上手にしまらずゆるくなる時があります。また、下側がきつくても胸元が空くので、呼吸が楽で苦しくありません。
出来上がって回す時に逆方向に動かすと、浴衣の胸合わせがくずれるので必ず右向きに回すようにしてください。

浴衣は「左前」と「右前」とで意味が違う?

まさか幽霊!?間違えると大変なことに


着物の合わせは、「右前」で着ます。というと、何だか右側が上に重なるような感じですが、これは自分の側から見てのことなので、実際には左側の部分(おくみ)が上になります。訪問着など左右で違う柄が入っている着物では割と間違いが少ないのですが、総柄や無地のものは間違いやすいので合わせるときに確認してください。コツとしては、自分の右手が胸元に差し込みやすい方向、と覚えると良いでしょう。左利きの人はちょっと不便ですが、和服の場合、懐紙などを胸元に入れることが多いので納得できます。「左前」ということばは、会社などが倒産の恐れがあるときに今でも使います。仏式で亡くなった人に着物を着せる際に使う用語から発しています。縁起が悪いとされているので、くれぐれも気をつけてください。

洋服の合わせとは違う


洋服の場合には、重ねが男性と女性では違います。そのため、ユニセックスの服を着た時に、違和感を覚えることがありますよね。着物の場合には、男性も合わせは女性と変わりません。男性だからといって、左前で着ていると注目されてしまうのでご注意を。ちなみに男性の浴衣にはおはしょりも必要なく、ジャストサイズで着られるので一層気軽です。が、胸板が薄い人は、洋装のときよりも貧相になってしまいます。男性の浴衣の帯は腰骨近く、かなり下の方にしめるのですが、どうしてもゆるみが出る場合には一枚タオルを巻いておくと落ち着きます。

いつごろから着られるようになった?〜浴衣の歴史〜

浴衣は平安時代の蒸し風呂から始まった?


今でこそ浴衣はおしゃれ着として、外出の装いともなりますが、起源としてはごくごくプライベートな衣類だったようです。浴衣の語源は、「湯帷子(ゆかたびら)」。平安時代の貴族たちが入るお風呂は、今でいうサウナのような蒸し風呂でした。その際にやけどをしないように着たものが、浴衣の原型といわれています。
その後、湯上りにも着られるようになり、さらに寝るときの寝間着として使われるようになります。ちょっと近くまでの夏の気軽な外出着となったのは、江戸の中期といわれています。通常の着物の下には長じゅばんなどを着用しますが、浴衣は基本的に素肌の上に着るものです。当時、風呂屋が普及したことにより、その行き帰りに汗を吸い取るものとして庶民に広がったようです。

浴衣の基本の綿地には暮らしの知恵がいっぱい


江戸時代に夏の普段着として定着していった浴衣の生地は、木綿です。当時は町人が絹を着用することが禁止されていたため、木綿の浴衣は一層暮らしに定着していきました。伝統柄に多い藍染の浴衣は、自然の虫除けともなり、夏の夜にはかかせないものでした。風通しが良く、汗を吸い取り、肌触りの良い浴衣は、蒸し暑い日本の夏を快適にしてくれます。現代のマナーとしては、浴衣は夕方から夜の装いとされています。イベントなどがある場合には仕方ありませんが、日の光の中では意外と透けやすいので気をつけてください。すっきりおしゃれな髪型に整え、いつもと違う自分を、日本の良き文化のひとつである浴衣とともに楽しんでみてはいかがでしょうか。

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