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朝起きて、歯磨き粉をつけた歯ブラシをくわえる…無意識のうちに行っている習慣ですが、歯を磨くのに必ず歯磨き粉は必要なのでしょうか。歯磨き粉がなくても同様の効果があり、歯磨き粉はいらないという説も耳にしますよね。歯磨き粉には実際、どれだけの効果が期待できるのでしょう。ここでは歯磨き粉に含まれる成分や、その有用性について調べていきます。

歯を磨くのに歯磨き粉なんていらない?

歯垢落とし効果は歯磨き粉なしでも

歯磨き粉が不要という説は、歯垢落としの部分から説明されていることが多いようです。食事の都度正しいブラッシングを行なえば、歯磨き粉がなくても歯垢は十分に落とせるといいます。むしろ歯磨き粉の泡が多いと、磨いている箇所が隠れてしまって十分磨けない場合があったり、途中で口から泡が溢れてそのまま止めてしまうということも起こります。またミント系の味付けが多いことで清涼感があるため、十分に磨けたような気分になってしまうという弊害も。実際に歯磨き粉をつけていても、きちんと磨ければ問題はなさそうですが、白い泡やすっきり感のせいで磨き残しがあるようでは本末転倒です。

歯磨き粉の成分によっては口腔内環境の改善も

一方で現在多く見られる、機能成分を含む歯磨き粉では口腔内環境を整え、歯や歯茎の健康に貢献すると話す歯科医もいます。良く耳にするフッ素には、歯質強化・再石灰化効果が期待されるので虫歯予防には有効です。また、抗菌作用があり口臭を押さえる成分や、歯周組織の回復を促す薬効成分を添加している商品も多数あります。歯磨きに洗浄効果だけではなく、これらの効果を求めるのであれば、やはり歯磨き粉は必要ということになるでしょう。
問題は磨き方であって、歯磨き粉そのものが悪いというわけではないようです。

歯磨き粉に含まれる研磨剤とはどういうもの?

歯磨き粉の中の研磨剤の成分って?

歯磨き粉の成分には研磨剤、保湿剤、発泡剤、香料、薬用成分などが含まれています。歯に付着した食べ物の汚れや油脂を落とすのは、発泡剤です。こちらも界面活性剤が含まれる商品については問題視されたりしますが、研磨剤との役割は別です。研磨剤はその文字の通り、歯の表面に染みついたステインと呼ばれる頑固な汚れを削り落とす役割を果たします。スクラブ洗顔や、紙やすり効果を考えれば良く理解できますよね。
歯磨き粉の成分表示に「研磨剤」と明記されているものは少ないようですが、次のような成分が研磨剤として使われています。

  • リン酸水素カルシウム
  • リン酸水素ナトリウム
  • 炭酸カルシウム
  • 水酸化アルミニウム
  • 無水ケイ酸

研磨剤が効きすぎると歯が薄くなる?

歯の表面を削って汚れを落とすということは、エナメル質が薄くなっていくということになります。研磨剤入りの歯磨き粉の影響が懸念されるのは、このためです。エナメル質が薄くなり内部の象牙質がむき出しになると、知覚過敏などの症状につながります。また、歯がもろくなったり、細菌の影響を受けやすくなることも考えられます。また研磨剤で削られると、キズが入るため逆に汚れがつきやすくなるとの指摘もあります。
強力な研磨剤入りの歯磨き粉で力を込めて歯を磨くよりは、歯科での定期的なクリーニングを行なう方が歯の健康には安心ともいえるでしょう。

フッ素入りの歯磨き粉はどうして虫歯予防に効果がある?

フッ素が虫歯を予防するのはこんな仕組み

人が食事をするたび、歯からカルシウムやリンなどのミネラルが溶け出しているのはご存知でしょうか。本来の再石灰化とは、だ液によってこれらの溶け出した成分が再び歯に戻されることをいいます。虫歯はこのバランスが崩れたときに、発生するといわれています。フッ素はこの再石灰化を促進する働きをもち、正常な状態に戻します。初期の虫歯ならば、フッ素が与えられることでミネラル強化につながり、回復できるようです。また虫歯の原因は、歯磨きで落としきれなかった歯垢(プラーク)が発する酸によるものです。フッ素はこの酸の量を抑制し、虫歯菌の増加を阻止します。口腔内環境が酸性に傾くのを止め、虫歯になりにくい中性に保つ役割を果たします。

フッ素が留まる時間と継続がカギに

フッ素入りの歯磨き粉を使っていても、次第に効果は薄れていきます。食事のたびにフッ素入りの歯磨き粉を利用し、中性の状態を長く保てればそれだけ虫歯のリスクを下げることに。歯の洗浄効果と虫歯対策を徹底するのであれば、食事の後軽くうがいをし、先に何もつけずに歯を磨くという方法が効果的です。歯垢を十分に落とした後、フッ素入りの歯磨き粉をつけてすべての歯に行き渡るよう、力を入れず念入りに磨きます。これならば、軽くすすぐだけなのでフッ素効果が流れ落ちず、口腔内も清潔になりますよね。正常なサイクルで歯の再石灰化を行なうためには、フッ素を継続的に与え続ける必要があります。単にフッ素入りの歯磨き粉を使っていれば、それで虫歯が防げるというものではありません。

ホワイトニング用の歯磨き粉が着色汚れを落とす仕組みは?

歯磨き粉ができるのは表面の汚れ落としのみ

本来、歯は人それぞれの色味があり、もともとが真っ白という人はほとんどいません。クリームがかっていたり、グレーがかっていたりと体質や皮膚の色によっても左右されます。歯磨き粉のホワイトニングは、表面についた汚れを落とすだけなので、個人が持っている本来の歯の色に戻すという意味です。歯科で行う本格的なホワイトニングのように、表面の汚れ落としに加えて内部からの漂白を行ない、さらにコーティングして歯そのものを白くするではありません。
表面上の汚れを強力に落とすのには、削るのが一番良い方法です。そこでホワイトニング効果が謳われる歯磨き粉には、ほとんどの場合、研磨力の強い成分が配合されています。
歯に色素が付着する現象は、歯の保護膜であるタンパク成分のペクリルに、ステインが結合して起こります。研磨剤はこれらを一度に削り落とすので、歯が再度保護されるまでには半日~1日ほどかかるといわれています。このため、ホワイトニング用の歯磨き粉によっては、使う頻度が指定されているものもあります。

研磨によらないホワイトニング用歯磨きも登場

ホワイトニングが気になる層から人気が高いのが、イオンや分解酵素などを利用した歯磨き粉です。削ることではなく、化学的に汚れを分解して歯本来の色を取り戻します。研磨剤が含まれていないにも関わらず、数回の使用で効果が実感できると評判も上々。海外製品だけではなく、国内の有名メーカーのものもありますが、ドラッグストアなどでの市販はなく、ネット通販か歯科医院での購買のみとなっています。歯の表面に損傷を与えることなく白さが実感でき、虫歯予防の効果も期待されます。歯の色が気になっている人は、毎日の歯磨きタイムに取り入れてみてはいかがでしょうか。

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