あまり印鑑について詳しくない人でも、何となく 象牙でできた印鑑が良いものという知識を持っているようです。でも、なぜ象牙の印鑑が最高級といわれるのでしょうか。水牛の角を材質とする印鑑も見かけますが、どのように違うのでしょう。ここでは象牙の印鑑の特徴や価格、手入れの方法について見ていきましょう。
<目次>
象牙の印鑑とワシントン条約
象牙の加工品って購入できるの?
1980年代まで日本に輸入されていた象牙は、年間270tにも上りました。象が絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約で象牙や象牙でつくられた製品の輸出入が全面禁止されたのは、1990年6月のことです。今日では、象牙の印鑑の輸入も当然禁止されています。正規の店で販売されている印鑑は、規制される前に輸入された在庫のみ。そのため、象牙の印鑑は今後さらに希少となっていくでしょう。象牙は印鑑素材の中でも、耐久性や印字の状態などから最高品質と言われています。需要が高く高額取引が見込めるため、象の密猟と象牙の密輸入は絶えず、未だに大きな問題となっているのです。
人工象牙も出回っている?
本象牙の取り扱いがワシントン条約で定められている以上、印鑑に使われる象牙材には限りがあります。本来高額なはずの象牙の印鑑。ネットなどで異様に安い象牙の印鑑を見かけた場合には、少し注意が必要です。そのような印鑑の材料として使われているのは、人工象牙であることがかなり多いようです。象牙のカケラを集め、一度完全に粉砕してから再度樹脂などで固めたものが人工象牙。再結晶宝石といわれる製品と、同様の加工法ですね。一応素材としては象牙である以上、まったくの詐欺商品とは言えません。が、耐久性や使用感などは本物の象牙と比較にならないと言われています。
象牙の印鑑の特徴(使いごこち)は?
印鑑の王様と呼ばれる象牙はどこが良いの?
象牙の印鑑が好まれるポイントしては、主に次のようなものが挙げられます。
- 高級感
- 耐久性
- 印字の良さ
象牙独特の、アイボリーホワイトは均一な白さではありません。自然素材ならではの微妙な色あいとなめらかな光沢は、使い込むほどに手に馴染み味わいを深めます。一度作れば一生ものとなる実印を象牙素材で、と望む人が多いのもうなずけます。象牙は自然素材の中では、非常に耐久性に優れます。正しく作られた象牙印は、チタン製にもひけをとらないとまで言われています。印面の摩耗が起こりにくく、いつまでもくっきりとした美しい印を示してくれるのです。
象牙の印鑑は押しやすい!
四千年の歴史を持つ中国でも、象牙の印は歴代皇帝の象徴として使われてきています。大切な国の文書に押される印章が、不鮮明であってはなりません。象牙は、精緻な彫刻にも耐え、鮮やかに文字や紋様を再現します。手掘りによる繊細な作業により、さらに細工が引き立ちます。また、良く手に馴染むため、くっきりとした印影を残すことができます。印鑑を押すのが苦手、というのを良く耳にします。いつも、かすれやにじみ、またぶかっこうな捺印に悩まされている人こそ、象牙の印鑑を試してみると良いかもしれません。象牙が好まれてきたのは、単に高級品というだけではなく、その機能性によるものでもあります。
象牙の印鑑って、いくらするの?
意外と手が届く価格帯のものも
象の年齢や種類など象牙によっても、さまざまな価格帯があります。最高級品は、天井知らずといったところでしょう。が、普通に流通しているものは確かに印鑑としては高額ですが、まったく手が届かないというわけではありません。一般的に売られている象牙の印鑑の相場は、15,000~30,000円というところです。平均価格としては20,000円程度となります。
○象牙材印鑑 通販サイト価格例(15mmサイズ)
サイト名 | 価格(円) |
---|---|
はんこdeハンコ | 16,800 |
ハンコヤドットコム | 19,400 |
国士堂 | 16,280 |
平安堂 | 29,600 |
はんこ良品 | 31,428 |
BESTはんこ | 12,960 |
知っておきたい象牙素材のランク
象牙のどの部分を使うかによっても、印鑑のランクは変わってきます。象牙は木の年輪のように、中心から部分が分かれています。中心部分を「中心層」と呼びそのすぐ外側が、「中皮層」さらに「外皮層」という構造となっています。中心よりになるほど、密度が高くなり、良い印鑑となります。1本の象牙からは、この芯を含んだものはほんのわずかしか取れません。そのため、中心層から作られた印鑑は、象牙材の中でも最高級ランクとなります。
さらに希少性の高い象牙印に、「芯持」または「日輪」と呼ばれるものがあります。これは、芯部分を中心にして横に切り取ったカタチの印鑑です。このように贅沢なカットをすることで、水の輪のような紋様が浮かび上がり、あたかも日輪のように見えるのです。象牙印鑑の中では超高級品として珍重され、15mmサイズで10万円以上するものもあります。
象牙の印鑑を長く、大切に使うには?
ケースに入れていても痛むの?
印鑑は意外にもこまめなお手入れが必要です。使う都度に丁寧に手入れをしておけば、何十年でも変わりなく、くっきりとした印影が保てます。最低次のような習慣をつけて置いてください。
- 使い終わったら、すぐに柔らかい布やティッシュでふき取る
- タンスなどに入れて放置しない
- 温度や湿度に気をつける
- ブラシで掃除する際には柔らかいものを使う
朱肉が残っていると、油分が染み込み印面がもろくなります。ちょっとしたことで、欠けたり、印影がぼやける原因となります。また、稀に虫食いの被害に合う事も。印鑑の素材にもよりますが、木材の印鑑は基本的には水洗いを避けます。印面がもろくなったり、木が膨張したりする原因となります。
印鑑は生き物 大切に扱えば期待に応える
象牙は水分を吸収しやすい素材です。こちらも木材と同様、水洗いによってもろくなる恐れがあります。どうしても洗う必要がある場合には、ぬるま湯などに浸した柔らかい布、柔らかめの歯ブラシなどで優しく印面を洗い、しっかりとふき取ります。ただし、象牙は乾燥にも弱いので、乾かし過ぎも禁物。陰干しで水分を飛ばしたら、しっかりと印鑑ケースに入れます。
直射日光のあたる場所や、極端に温度が高くなる場所には保管しないように気をつけてください。特に冬場はヒーター近くなど、温度変化の激しいところではひび割れる可能性もあります。
いつまでも作った時のような鮮やかな印影を保つために、印鑑に対しても愛情が必要なのです。
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