最近は、充電池の種類にもいろいろありますが、ノートパソコンなどに使われていているリチウムイオン電池とは、どのような特性があるのでしょうか。ニッケル水素電池やニッカド電池といった他の電池との違いや、構造は?ここでは、身近に使われているリチウムイオン電池について、気になるその寿命など、役立つ情報をまとめてみました。
<目次>
リチウムイオン電池とはどういう電池?
実用化されている中では横綱クラス
リチウムイオン電池は、放電と充電をくり返して使える2次電池です。現時点で実用化されている充電池の中では、最もエネルギー密度が大きく高い電圧が得られます。多くのエネルギー量を必要とするノートPCや携帯電話で、リチウムイオン電池が用いられるのはこのためです。また、ニッカド電池やニッケル水素電池と比較して、「メモリー効果」といわれる現象が起こりにくいという特性をもっています。メモリー効果とは、充電が残っている状態で再充電することで、電池容量が減少することです。使用中に急激に電圧が低下してしまうため、実際の使用時に使える時間が短くなります。リチウムイオン電池はこのメモリー効果がないため、充電したいときに充電する継ぎ足し充電が可能です。こまめに充電したい携帯電話などの利用には最適です。
リチウムイオン電池の構造って?
電池はマイナス極とプラス極の間を電子が移動することで、電流が流れます。リチウムイオン電池では、この電子にあたるのがリチウムイオンです。もっとも多く使われている電極材料としては、プラス極にはコバルト酸リチウム、マイナス極には炭素です。これら2つの金属板は、セパレータといわれる物質を挟んで何層にも積み重ねられています。電子を発生させるためには、有機溶媒の電解質が使われています。最近開発されたリチウムポリマー電池は、この電解質にゲル状の高分子を利用しており、さらにエネルギー効率をアップさせています。
リチウムイオン電池の寿命はどれくらい?
メーカー発表では500回の充放電可能だが
メーカー側では、リチウムイオン電池の充放電の寿命を500回と発表しています。次第に減衰することを想定しても、300回で約70~80%、500回では約50~70%での能力があるとのことです。しかし、実際に携帯電話で毎日充電した場合、1年後に80%よりも低いと感じる人が多いのではないでしょうか。リチウムイオン電池は、メモリー効果がないといわれています。継ぎ足し充電を重ねても、さほど寿命に影響はしないはず。それでも、ノートパソコンも携帯電話も、使用開始から1年もたてばバッテリーの“もち”が急激に低下するのはなぜでしょうか。この疑問について考えられるのは、充電試験と実生活の状況の違いです。サイクル試験では充電2.5時間、充電から放電の間に切換を1時間ほど取ります。その後、放電を1時間行い1サイクルに4.5時間かけます。300サイクルの繰り返し期間は約2ヶ月。実生活では、携帯電話を使う場合1年間の間ほとんど満充電状態となります。
実生活ではリチウム電池の劣化要因が多い
また、温度変化などの環境条件も、サイクル以外で劣化要因となります。パソコンの場合には、ACアダプターで使用する際も電池パックを接続したままの人が多いと思われます。このため、電池パックは常に満充電状態になっています。これらの条件により、実際には試験結果よりリチウム電池の寿命が短くなってしまうのです。リチウム電池は満充電状態で放置すると急激に劣化します。また極端な過充電・過放電では電極が不安定になります。場合によっては発熱、発火など危険な状態となります。このような危険性を可能な限り回避するため、リチウムイオン電池は、一次電池のように電池単体の販売はされていません。電圧を管理する制御回路や、保護構造を備えたバッテリー製品としてのみ取り扱われています。
比較!リチウムイオン電池とニッケル水素電池
性能の面ではリチウムイオン電池が圧勝
ある意味リチウムイオン電池とは、それまであった充電池の欠点を改良してきた電池ともいえます。そのため、リチウムイオン電池には次のようなメリットがあります。
- メモリー効果がない
- 高い電圧・大きなエネルギーを提供できる
- 自己放電が少ない
- 機器の軽量化ができる
電圧については、ニッケル水素電池1.2Vに対して3.7V。これは、例えば電池の本数が1/3で足りるという事です。エネルギー密度が高いということは、同じエネルギーを得るための重量やサイズが小さくて済みます。このような特徴からモバイル機器の電源に使いやすいわけです。
コスト面からニッケル水素電池はなくならない
一方で、ハイパフォーマンスを実現するリチウムイオン電池は、非常に高価な電池です。単純に比較した場合、リチウムイオン充電池は単体で購入すると約4~5000円になります。単三のニッケル水素充電池は4本セットで2000円程度です。このコストの違いにより、自動車などにはニッケル水素電池が利用されています。リチウムイオン電池はその特性上、レアメタルやカーボンナノチューブなどがふんだんに使われています。今後も画期的な技術革新が無い限りは、リチウムイオン電池の価格が下がることは期待できないと思われます。
○リチウムイオン電池とニッケル水素電池のエネルギー密度比較
電池種類 | サイズ | 重量 | 容量 | 電圧 | エネルギー 重量 | エネルギー 密度 | 体積エネルギー 密度 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
リチウムイオン電池 | 18.3mm × 65mm | 44g | 2.4Ah | 3.7V | 8.88Wh | 201Wh/kg | 520Wh/L |
ニッケル水素電池 | 34mm × 60mm | 178g | 97.0Ah | 1.2V | 18.8Wh | 61Wh/kg | 195Wh/L |
比較!リチウムイオン電池とニッカド電池
有害物質を含むため減少傾向にあるニッカド電池
ニッカド電池の正式名称は、「ニッケル・カドミウム充電池」。マイナス極側にカドミウム、プラス極側にオキシ水酸化ニッケルが利用されています。イタイイタイ病の原因とされるカドミウムは、発がん性など人体に影響を与えるとして有害物質に指定されており、輸出入規制もされています。そのため、全世界的に使用が減少する傾向にあります。電池能力としては、次のような特徴があります。
- 最大500回程度の充電に耐える
- 安定した連続放電が可能
- 大電流特性をもつ
これらの特徴を生かし、ハンディ掃除機などのモーター機器に利用されることの多い充電池です。しかし、これらの特性もリチウムイオン電池と比べた場合には、それほどのメリットにはなりません。
市場はニッケル水素電池へ
一方で、放置しているだけで充電容量が低下する自己放電が多く、継ぎ足し充電による「メモリー効果」の発生が顕著でもあります。環境への配慮という背景も含め、市場はニッカド電池の欠点を改良したニッケル水素電池へと移行しています。リチウムイオン電池との比較では、エネルギー密度の高さに加え、電力の減衰、対メモリー効果など、いずれもニッカド電池に優れた点は見られません。
○リチウムイオン電池とニッケルカドミウム電池のエネルギー密度比較
電池種類 | サイズ | 重量 | 容量 | 電圧 | エネルギー 重量 | エネルギー 密度 | 体積エネルギー 密度 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
リチウムイオン電池 | 18.3mm × 65mm | 44g | 2.4Ah | 3.7V | 8.88Wh | 201Wh/kg | 520Wh/L |
ニッカド電池 | 34mm × 60mm | 152g | 5.0Ah | 1.2V | 6Wh | 39Wh/kg | 110Wh/L |
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。