エコ対策の大きな目玉として推進されているレジ袋 の削減。一方では実質的な環境保護としては、ほとんど無意味だという意見もあります。マイバック持参が習慣化されつつある状況の中で、レジ袋の削減には意味があるのでしょうか。ここではレジ袋を減らしたい理由や、その効果について考えていきます。
<目次>
レジ袋の削減は無意味な取り組み?
レジ袋の削減で考えられている効果
現在使われているレジ袋はポリエチレン製で、原油が原材料となっている化学製品です。初めて生活の中に出現したのは1960年代ですが、紙袋よりも安価に製造できるため、1970年代後半からはあっという間にスーパーなどで普及しました。国民の購買行動が増加するとともに、家庭内のレジ袋の量も増えていきます。ゴミ袋として使いきれず、レジ袋そのものがゴミとして大量に廃棄されるようになりました。このような状況の中で環境に対する行動の見直しとして、レジ袋の削減が意識されるようになりました。レジ袋削減による効果には次のようなことが挙げられています。
- 石油資源をムダにしない
- 焼却時のCO2を減らす
- 消費者の環境意識の向上
- 廃棄物の減量により環境破壊を抑制する
レジ袋の削減には意味がないという考え方
レジ袋削減の声が高まる一方で、この取組にはあまり意味がないという意見もあります。その論点としては次のようなことが挙げられています。
- ポリエチレンは燃やしても二酸化炭素と水が発生するだけで、環境破壊にならない
- 主要な石油製品の残りを材料として利用しているので、コストが安くムダではない
- マイバッグなどの購入で逆に負担が増える
- ゴミ袋の購入は消費者への負担に加え製造コストがかかり、環境の負荷となる
これらの理由から、レジ袋の削減による環境への効果はほとんどなく、かえって負荷となる可能性があると言われています。しかし、理論上では焼却時の危険性がないとしても、不完全燃焼による有毒ガスの発生の恐れがあることも事実です。また、着色料に使われる顔料により、ダイオキシンの発生の恐れも捨てきれません。自然界の動植物への影響、特にクジラやウミガメなど、海洋生物の誤食による死は広く知られている通りです。レジ袋削減による明確な効果はともかくとしても、余るほど普及しているレジ袋の現実がこのままで良いかは疑問です。
レジ袋の削減がすすめられているのはなぜ?
そもそも少なくすることに意味がある?
現代はレジ袋余りと言っても良い状況です。無料で提供されるレジ袋は、どこの家庭でも置き場所に困るほど貯まっているのではないでしょうか。まったくレジ袋がないという家は、かなり稀なケースと思われます。台風や強風の中継では、良く捨てられたレジ袋が舞っている映像を目にします。海上や川に漂うレジ袋を見ても、誰も不思議に感じません。レジ袋を使い過ぎているという認識は、先進国共通のもののようです。もともと環境意識の高いドイツ、フィンランドなどではレジ袋は最初から有料です。1 枚あたり12円から 20円という価格設定のためレジ袋余りの問題はありません。アイルランド・デンマークなど無料提供されていた国々でも、環境問題として取り上げられ「レジ袋税(日本円21円換算)が課せられています。
現実的に節約できる数値って?
京都大学の環境保全センターの試算によれば、レジ袋削減が全国民的に行われることで、廃棄物処理は年間約38万トンの軽減となります。石油エネルギーとしては日本国内の家庭で消費する総エネルギーの1.3%にあたる74万キロリットルの節約です。また、各家庭で1年間に使うレジ袋は平均315枚といわれています。これを原油換算し電気エネルギーに変えた場合、1,000Wのドライヤーを約5.8時間使い続けられます。この数値が大きいか小さいかは人それぞれの受け止め方です。実際には、地球環境に対して何らかの行動をしたいと考えていた人が、レジ袋の有料化がきっかけでエコバッグを持ち歩くようになっていると考えて良いようです。
レジ袋の削減はコスト面で効果がある?
販売店側のコストは?
レジ袋の有料化を初期段階で導入した関東圏の大手スーパーでは、年間のコスト削減が1億5,000万円に達したと言います。当初、心配された客離れは、削減されたコスト分を商品価格に還元したことでほどなく解消され、企業イメージもアップ。結果的にはレジ袋の有料化によって、購入・搬送・管理にどれだけのコストが削減できるかという見本となりました。レジ袋の原価は0.2~0.3円と言われますが、無償提供し続けることで莫大な負担となります。当たり前のようにタダだったものが、ある日を境に有料化されることに抵抗感をもつのは自然な感情です。しかし、「なぜタダでもらえたのか?」「負担された金額はどこで回収されていたのか?」を考えれば、単純な販売店側だけのコスト削減とは言えません。
生産コスト・ごみ処理コスト削減
現在、レジ袋を製造するための原材料を原油で換算すると、およそ55万8,000キロリットルと言われます。これは日本の1日当たりの輸入量にあたり、大型タンカー2隻分に相当します。
さらにそこからレジ袋としての商品化を合わせて考えると、その消費量を減らすことで国全体では莫大なコストの削減になることが想像できます。また、在庫管理・輸送にかかるコストなどがあります。配られたレジ袋は、最終的にゴミとなって収集されます。これは、指定ゴミ袋を使えば同じことという意見もあります。しかし簡単に捨てられるレジ袋のせいで、生ゴミの量が多くなっているとも考えられています。千葉県が23年度に発表した試算では、レジ袋1枚がそのままゴミとして捨てられた場合、その重さは県内で年間1万7,100トン。これが削減されれば、ごみ処理経費約5億7,200万円分が軽減されると伝えられています。
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