引越しに商品の配送に、なくてはならないダンボール箱。毎日、何気なく目にはしているものの、詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。どこにでもあるダンボールはいつ、どうやって生まれたのでしょう。サイズの規格や種類は?普通の紙とは何か違うのでしょうか。ここでは、身近にあるダンボール箱について、その歴史からリサイクルまでの詳細を見ていきましょう。
<目次>
ダンボール箱はどうやって生まれたのか〜その歴史〜
ダンボールの誕生は帽子?発明は英国紳士のため
意外なことにダンボールの誕生は、マジシャンでもおなじみの、黒いシルクハットが関係していました。1856年の英国でシルクハットの内貼りとして、汗を吸い取るために発明されたのがダンボールの原型です。波型の紙を帽子の内部に仕込むことで、保温性と通気性、さらにクッション性を実現しました。ヒントとなったのは、さらに年代を遡った貴族の襟飾りだったそうです。
包装資材として使われたのは、アメリカが最初です。割れやすいガラス製品の包装用に、緩衝機能を着目され、利用されるようになりました。19世紀の終わりごろには、現在のダンボールに近い形で作られています。
頑丈な“ダンボール箱”の発明者は日本人
壊れものに巻いて使うのは、ダンボールシート。現在の固いダンボール箱ができたのは、1909年の日本です。三盛舎(後のレンゴー)を設立した井上貞治郎氏が、厚紙でダンボールシートを前後から挟み、溝をつけて箱折りにしました。大量にダンボール箱を作るための機械は、綿繰り機械からヒントを得て自ら考案したそうです。折りやすいように「段」をつけたボール箱イコール「ダンボール箱」というわかりやすい名前も、この時に初めてつけられたものです。後年、現レンゴーグループは井上貞治郎氏の意志を継いで、生活の中の「包装」を提供するパッケージカンパニーとなっています。
ダンボール箱にはどんなサイズがあるのか〜その規格〜
実は公式の規格はない?ダンボール箱サイズ
ダンボール自体には、JIS(日本工場規格)とJCS(段ボール業界規格)の2つの規格があります。が、そこに決められているのは、段ボール箱の試験方法や材料規格などで、正式にはサイズ規格がありません。元々包装紙として作られたダンボールですので、おそらくは包装するものに合わせ、それぞれが組み立てられてきたという経由のせいなのでしょう。
販売されているダンボールには記号がつけられ、いかにも統一基準のような感じがしますが、実は引っ越し業者やホームセンターなどが独自の規格サイズを展開しているだけなのです。確かに同じような大きさに見えても、宅配便の箱の大きさが微妙に違うことがあります。果物のダンボール箱も、りんご・みかんといった中味によって縦長、横長と形状が異なっていても不思議に感じませんよね。
実用的なダンボール箱の大きさは?
さまざまな大きさのダンボール箱ですが、汎用的な実用サイズには一応の目安があります。多くの場合は、DVDの大きさや、A4・B5といった用紙サイズが基準となりおよその大きさが決められています。
○普及しているダンボール箱のサイズ例
形状・名称 | 規格寸法 | 備考 |
---|---|---|
メール便A4 | A4サイズ×2.5~3.5cm | ポスト投函可能サイズ |
メール便 | 60~70cm×2cm | |
メール便(定形外) | 90cm×2cm | |
用紙規格 | A5・B5・A4・B4×深さ | 用紙サイズ |
宅配便規格 | 外寸合計100cm未満 | 宅配便の料金規格に合わせたサイズ |
外寸合計120cm未満 | ||
外寸合計130cm未満 | ||
外寸合計140cm未満 | ||
外寸合計160cm未満 | ||
外寸合計170cm未満 | ||
ミニ | 容量2リットル以下 | SSサイズ |
小型 | 容量5リットル以下 | CDケース規格 |
ダンボール箱の強度はどうなのか〜その材質〜
ダンボール箱の強度を決めるフルート
基本的なダンボールは、3層構造です。表・中芯・裏を貼り合わせてつくられ、この中芯が、波型のフルートと呼ばれる部分です。ダンボールの強度は全体の材質の違いとともに、このフルートの種類・厚みによって決まります。フルートがダブルのものはWフルートまたはABフルートなどと呼ばれ、より強固で重量物を入れて運ぶのに適しています。
○フルートの種類と強度
名称 | 厚み | 強度 | 用途 |
---|---|---|---|
Aフルート (AF) | 5mm | 強 | 青果物の外箱など |
Bフルート (BF) | 3mm | 中 | 書籍・内装箱など |
Eフルート (EF) | 1.5mm | 弱 | ギフトボックスなど |
Wフルート (WF)
ABフルート (ABF) |
8mm | 最強 | 重量物運搬・大きいケース・重いケースなど |
ライナの材質も強度に影響
ダンボールの表・裏部分をライナといいます。ダンボールのリサイクル率の高さは知られていますが、このライナ部分にどの程度の古紙が使われるかによって強度に差がでます。ライナの名称は、古紙に混入するバージンパルプの配合率によって異なり、バージンパルプが多いほど、強度が大きくなります。ダンボールの強度は、1平方メートル当たりの重量(g/㎡)で表されます。
○ライナの呼称と材質・強度
名称 | 材質 | 強度 | 用途 |
---|---|---|---|
C5 | 古紙90% | 160~170g/㎡ | 軽量物・衣類 |
C6 | 古紙90% | 60~170g/㎡ | 軽量物・衣類 |
K5 | 古紙+バージンパルプ | 170~180/㎡ | 壊れ物・美粧印刷 |
K6 | 古紙+バージンパルプ | 210~220/㎡ | 積み上げ向き |
K7 | 古紙+バージンパルプ | 280/㎡ | 輸出用・オーダー |
(K5以降の古紙配合率は30%以上)
ダンボール箱はどうやって生まれ変わるのか〜リサイクル〜
エコ優等生のダンボール箱
ダンボールはリサイクルの優等生と呼ばれ、古紙利用率は90%以上です。しかも、ダンボール箱は、回収されたダンボールのみで再製造されるわけではありません。新聞紙や雑誌、ボール紙といったさまざまな古紙から再生されて作られています。生活のいろいろなシーンで利用されているダンボールの回収は、工場、量販店、小売店、家庭、オフィスと各方面から行なわれています。大きな事業所からは回収業者によって、家庭からは自治体回収やゴミ分別収集などで、回収されます。環境への意識が高まることで、ダンボールの原料となるリサイクルマークのついた古紙についても順調に集められ、再資源として利用できるようになりました。
切れ端までムダにせず再びダンボール箱に
各所から回収されたダンボールや、その他の古紙などは利用できる部分を選別にかけます。工場などで出た紙の切れ端、破壊されたダンボール箱などもすべて再利用ルートへ向かいます。ダンボールは一度細かく粉砕され溶解を経て、紙力増強剤の投与などで耐久性が落ちないような処理をされ、再びダンボールとなります。日本のダンボールリサイクルシステムは、非常に優秀なことで知られています。資源の少ない日本において、ダンボールはそのほとんどの原材料を国内でまかなっている、稀有な存在といえるようです。
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