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書道をしていない限り、筆で文字を書くことが少なくなった現代では、筆ペンが慶弔などのフォーマルなシーンで活躍します。大人のたしなみとして、筆ペン遣いをマスターしておきたいものですよね。でも、筆ペンはいつ頃から使われるようになったのでしょうか。筆のように書けるのはどういう仕組みなのでしょうか。そこで今回は、意外と知られていない筆ペンについて調べてみました。

筆ペンとはどういうものなのか

サインペンのように手軽でありながら和文字を美しく

現在の筆ペンは、サインペンのように気軽に使える一方で、日本古来の筆づかいが再現できるよう工夫がされています。筆書きでもっとも特徴的なのは、トメ・ハネ・ハライといった筆運び。また、筆圧の強弱に応じて、自然に太さが変わることで味わいのある文字となります。

筆ペンは、万年筆のインクのように本体の軸部分に墨液を内蔵し、いつでもどこでも使用することが可能です。さらに、ペン先が筆に近い書き味となるよう進化を遂げてきました。穂先の材質には、合成樹脂やフェルトペン、獣毛などがあります。

筆ペンの歴史

最初の筆ペンは、1972年セーラー万年筆から発売されました。しかし、当時の合成樹脂で作られた筆先は、あまり書き味が良くなかったようです。その後、開発を重ねたくれ竹1974年の秋に年賀状への利用を視野に発売。筆の書き味への徹底したこだわりによって、爆発的なヒットとなりました。

当時は小型のインク壺付きの販売で、サインペンが50円の時代に200円という価格。それでも開発に協力した書道家などから、十分に売れるはずというお墨付きをもらって踏み切ったそうです。

毛筆の書き味を再現できる筆ペンの構造

筆ペンの構造は3タイプ

現在販売されている筆ペンの構造には、主に3タイプあります。

l  スクイズ式
l  ジャバラ式
l  中綿式

スクイズ式は、カートリッジが装着されておりカートリッジを押すことでインクが供給されます。インク量を自分で調節できるというメリットがある一面、面倒に感じる人がいるかもしれません。ジャバラ式はインクが自動的に供給されるタイプです。中綿式は毛細管現象によってインクが出てくる仕組みを採用しており、安価な筆ペンに多く使われています。

高級獣毛を使った筆ペンも

墨・筆・硯が一体となった便利な筆記具として筆ペンが誕生し、40年以上になります。もっとも重要となる筆先も進化し続けており、さまざまな価格帯が販売されています。筆先には「筆タイプ」と「サインペンタイプ」があります。

筆タイプは、合成繊維天然の獣毛の2系統です。特にイタチの毛を使った筆ペンは、しなやかながら弾力に富み、本格的な筆運びを再現しています。サインペンのタイプは、ウレタンなどのゴム系統、プラスチックや繊維芯の硬筆系統があります。筆がどうも苦手という人でも、なじみやすい書き味です。

味のある文字が書ける筆ペンの使い方

握り方は「鉛筆」、角度は「筆」

筆ペンの持ち方に関しては、鉛筆と同じで問題ありません。筆持ちするには、細すぎるので安定しませんよね。角度は筆で書くのと同様に、70~90度に立てます。筆ペンは寝かせると線が太くなり、文字のカタチがとりづらくなります。立てるほど線が細くなるので、小さな文字を書くときほど角度を深くすると良いでしょう。太い線を書きたいときは、筆ペンを寝かせるのではなく、筆圧をかけます。

姿勢を正しくゆっくりと

筆と同様、筆ペンも落ち着いてゆっくりと丁寧に書けば、自分なりに納得できる文字になります。また、お習字のときのように姿勢にも注意しましょう。

筆ペンは、筆を再現したものです。墨で書くときと同じく、トメ・ハネ・ハライをきちんと意識しないと締まりがなく、ダレた感じの文字になってしまいます。筆ペンを使うのは、年賀状や慶弔といったあらたまったシーンが多いですよね。まずは文字の基本となる線を試し書きして、筆ペンの書き味になじんでから本番に臨んでください。力の入れ具合を確認し、線の太さを見ておきましょう。筆ペンに焦りは禁物です。

シーンによって使いわけよう〜筆ペンの種類〜

筆ペンの筆先タイプによる違いを知る

筆ペンの筆先によって、文字のイメージが変わります。筆先タイプによる違いを確認しておきましょう。

〈筆ペンのペン先の違い〉

ペン先の材質・形状 特徴
硬筆タイプ アクリル繊維
硬い芯で細字の水彩マーカーに近い
軟筆タイプ ウレタンなどゴム的な弾力がある
キュッキュッと音が出る
毛筆タイプ 合成・天然毛
もっとも筆に近い

筆のように文字の線に強弱がつくのは、毛筆タイプ。もっともボールペン的なのは硬筆タイプです。軟筆タイプは柔らかいサインペンのような感じで、慣れるまで書きづらく感じるかもしれません。

フォーマル度が高いものには毛筆タイプ

日頃使っているペンに最も近いのは、硬筆タイプ。ただ、線が単一的で味わいがありません。氏名の記帳や、年賀状にひと言添えるなどというときには、これで十分です。小さな文字が書きやすく、失敗がありません。

軟筆タイプは、大きな文字を書くのに適しています。慣れていないと、のっぺりとした文字になりやすいので、力の加減に気をつけましょう。

慶弔用の封筒や、ハガキの宛名書きなど、フォーマル度が高いものには、毛筆タイプがおススメです。あらたまった感じを与えるので、相手に対して失礼になりません。使いこなせば筆と変わらず、実用価値が高まります。

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