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オフィスで使われる「モニター」と言えばパソコンのディスプレイ、会議用のモニター、食堂や休憩室のテレビモニターなどが考えられます。では「業務用モニター」とはどのような物でしょうか。一般的に、業務用モニターは放送業界、映像関係、広告代理店、デジタル系デザインなどの映像に関係した業種で使用されます。では普通の会社で業務用モニターが必要になるケースとはどんな場合が考えられるでしょうか。そして業務用モニターを購入する場合、価格、家庭用との違い、性能や機能のポイントなど、選ぶ基準について説明したいと思います。

業務用のモニターってどういうもの?(家庭用モニターとの違いは?)

業務用モニターとは「プロ用」の映像・画像用画面のこと

家庭や一般的なオフィスで使うモニターと業務用モニターの最大の違いは「色の再現性」です。
色の再現性の精度が求められるのは、例えば複数の人がひとつの作品に関わっている場合、それぞれのモニターに表示される色にバラツキ(微妙な違い)があると映像や画像を制作する立場としては不都合が生じます。家庭や一般の業務で使用するモニターにはそこまでの高スペックが求められていないため、同じメーカーの同機種のモニターであっても、微妙に色が違ったりします。業務用モニターは、映像制作会社、テレビ業界、デザイン、IT企業などのプロが求める正確な機能、ハイスペック仕様であるため、プロフェッショナルユーズとして需要があるのです。
一般的なモニターと業務用モニターの違いを比較してみました。

一般的なモニター 業務用モニター
使用場所 オフィス、店舗、家庭、など 放送業界、デザイン業界、IT企業
公共施設(駅、空港など)
医療機関、航空関係 など
使用用途 ・パソコンディスプレー
・会議用モニター
・宣伝用サイネージ
・娯楽用TVとして
・映像制作
・デザイン制作/動画編集/CG加工
・宣伝用サイネージ
・医療用
・航空管制用
ニーズと特徴 ・ビデオやゲーム機との接続
・接続端子の互換性
・低価格
・取扱い易さ
・高解像度
・高画素密度
・色数
・耐久性
・業務に特化した画面形状(医療用など)

家庭用モニターとは「テレビ」や「パソコン用ディスプレイ」のこと

一般的に使われているモニターはディスプレイとも呼ばれます。主な使用はテレビとパソコンです。TVモニターとパソコンモニターの違いは以下のようになります。

(1)「TVチューナー」の有無
TVモニターには必ずTVチューナーが組み込まれていますが、パソコン用モニターにはTVチューナーはありません。しかし機種によってはTVチューナーの組み込まれたものもあるのでパソコンでテレビを見ることが出来ます。

(2)接続端子の種類
TVモニターはHDDレコーダーやゲーム機などテレビ放送以外の映像を楽しむための機器と接続する端子がついています。一方、パソコン用モニターに必要な端子はパソコン本体と接続するための端子です。USBやSDスロットが通常備わっている端子です。

(3)画質、画面など映像の見やすさ
TVモニターは、動く映像を表示することが求められるため、輝度やコントラスト比、応答速度などのスペックに重点が置かれています。パソコン用モニターは静止画や文字表示が中心なので、そこまでのスペックは備えていません。また映像や画像の表示の美しさを決める解像度は、高くなるほど文字が小さくなります。つまり、オフィスで一般的な業務をする人(書類やデータの作成)にとって解像度はそれほど必要ないのです。

(4)スピーカー
TVを楽しむには音質も重要な要素なので、TVモニターにはある程度の音質を出力できるスピーカーが内蔵されていますが、パソコン用モニターには音質はあまり求められてないようです。

業務用のモニターっていくらするの?

業務用モニターは家庭用よりかなり値段が高額です

◆業務用モニターは具体的にどのメーカーからどのような用途の製品が発売されているのでしょうか。業務用モニターを検索すると、大きく分けて以下の3タイプが挙げられます。

(1)   サイネージ用
空港や公共施設でのディスプレイや広告宣伝用としての用途。大画面表示、耐久性が重要

(2)会議用
小規模な会議から大規模な会議まで様々なタイプがある。タッチパネルやワイレス、パソコンとの互換性が重要

(3)映像処理用
色の再現性と操作性に重点がおかれ、最もプロフェッショナルな機種が揃っている。画像処理ワークに特化した専門的な機種。

◆サイネージ用、会議用のモニターは、一般的な大手電機メーカーから業務用モニターとして発売されていますが、クリエイティブワークに特化した業務用モニターは専門のメーカーや販売店で取り扱われています。

◆映像やデザインに関わる仕事や勉強をしている人にとって、色再現に優れた業務用モニターは購入の検討対象ではないでしょうか。そこで気になるのはやはり値段です。最近のテレビやパソコンの低価格化は私たち消費者にとってはありがたいことですが、プロフェッショナル仕様の業務用モニターの値段はどのようになっているのか調べてみました。

価格帯の相場(画面サイズ25〜30型、4K液晶ディスプレイの場合)
業務用モニター 30万〜100万、200万円以上
一般用モニター 7万〜20万円前後

◆同じ画面サイズの液晶ディスプレイでも、相当な金額の差が生じます。これは細かい仕様内容が業務用と一般用では異なるためです。

◆業務用モニターを選ぶ最低条件としては以下の内容が望まれるようです。

  • 解像度が4KあるいはフルHDである
  • 「色の再現性」を決定する表示色は10bit
  • パネルタイプはIPS液晶
  • 広色域対応はAdobe RGB

押さえるべき基本スペック一覧

画面サイズ パネルタイプ 解像度
広色域対応 コントラスト比 アスペクト比(縦横比)
視野角(水平/垂直) 表示色 輝度(cd/m2)
画素ピッチ 応答速度

業務用モニターを購入する場合の調達ルート

業務用モニターの購入を検討する場合、大手電機メーカーでは業務用モニターのカテゴリで法人対応のサービスを行っているので、直接相談するのも良いでしょう。こちらの要望に応じた機種の紹介と見積もり、導入後のメンテナンスも行ってくれるようです。また、デザイン制作に特化したクリエイティブ系の業務モニターを専門に扱うメーカーやサービス販売店もあるので、情報を集め、いろいろと比較することもお勧めします。

ブラウン管のモニターってどういうもの?

ブラウン管は今でもあるのでしょうか

デジタル製品の技術の向上と速さは素晴らしく、次々と新しい性能を備えた機種が登場しています。モニターの開発製造技術も同様で、現在私たちが使用するモニターは「薄い・軽い・高性能・低価格」になっています。しかし数十年前のモニターといえば「ブラウン管」でした。子どもの頃見ていたテレビはブラウン管だった、という人には懐かしいのではないでしょうか。では、現在このブラウン管モニター/テレビはどのようになっているのでしょうか。

◆ブラウン管モニターは「CTRモニター」と呼ばれています
なぜブラウン管と呼ばれるかというと、ブラウン管はドイツのカール・フェンディナント・ブラウン氏による発明でその構造の一部分である「陰極線配管」を総称してブラウン管と呼ばれています。ではCTRは何かと言うと、英語でCathode Ray Tube、「受像管」のことです。最近では日本でもCRTモニターという名称のほうが特に電気関係者の間では普通になっているようです。

◆ブラウン管モニターの現在の用途
現在ではすっかり見ることが少なくなったブラウン管モニターですが、もう市場には出回っていないのでしょうか。ブラウン管モニターと液晶モニターの世代交代を時系列にまとめてみました。
(1) 1990年代後期から「液晶テレビ」「液晶モニター」が市場に登場
(2) 2000年に入ると徐々に液晶テレビ/モニターが主流になってくる

「液晶モニターとブラウン管モニターの比較」

液晶モニター ブラウン管モニター
長所

・薄くて軽くい
・運搬・設置が容易
・表示範囲が広い
・デザイン性に優れている
・消費電力が少ない

短所
・大きくて重い
・設置場所をとる
・消費電力が高い
短所
・色合いが薄い
・動きのある映像を映すと残像が残る
・斜めから見ると画質が落ちる
長所
・画像がきれい
・動きのある動画に強い
・斜めから見ても画質は同じ

(3) 上の表でわかるように、ブラウン管モニターは液晶モニターの短所を補う役目で暫くは利用のニーズがありました。
(4) 2003年に液晶モニターの欠点をカバーする「プラズマテレビ」が市場に登場。現在では「有機ELディスプレイ」高性能モニターの技術開発が進んでいる。
(5) 現在の日本では新しいブラウン管テレビやモニターは生産されていません。

しかしながら、ブラウン管モニターの丸みのある形状や、ブラウン管ならではの持ち味、特に画質面を支持するユーザーも以外と多く、ブラウン管モニターは現在でも中古販売店などで取引されています。

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