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初めて万年筆で書こうとしたときに、違和感を覚える人が多いようです。ボールペンを使い慣れていると、 うまく書けていないような…万年筆にはそれに合った持ち方があります。万年筆のつくりに適した角度を知り、持ち味を発揮できるスタイルを身に付けましょう。ここでは、万年筆と紙との角度や、起こりがちなひねりなどを正しく矯正する方法を見ていきます。

万年筆は正しく持とう

固く握りしめはNG 力を抜いてリラックスしよう

万年筆の最大の持ち味は、スベらかな書き心地です。そのためには、ボールペンで書くときのように、筆圧をかけてはうまくいきません。ボールペンでは人差し指に力がかかり、指の間に押し付けるようにして書いている人多いようです。ペンだこができるような持ち方は、万年筆には向きません。
持ち方のコツをつかむために、ティッシュペーパーを卵型に丸め、手のひらの中で持ちます。そのままティッシュをつぶさないように万年筆を持つことで、力を入れないイメージがつかめます。

頼りないとおもうくらいの軽さで持つ

指で万年筆を持つ、というよりは支えるイメージです。ボールペンとは角度が変わるため、指はやや伸ばし気味になります。万年筆はキャップを付けることにより、適度な重みが加わり、ベストバランスになります。万年筆自体の重さで紙に触れ、インクが流れ出るので、筆圧をほとんど必要としません。ペン先についているボールを転がしてインクを転写する、ボールペンのしくみとは根本的に異なります。
ペン先は金などのしなる金属で作られています。文字のつくりに従って、トメ、ハライなどがスムーズに書けるよう設計されています。強く押さえ込んでしまうと、この良さが発揮されず、インクが必要以上に流れ出てしまい、シミを作ってしまいます。

万年筆で文字を書くときの角度

万年筆はボールペンよりも寝かせる

万年筆で書く場合、ボールペンや鉛筆よりも寝かせ気味にすることを心がけます。ペン先の設計上、あまり角度をつけすぎるとインクの流れが細くなります。逆に極端に浅すぎても、インクが出ません。55度~60度が目安になりますが、その人のスタイルや万年筆の太さ、ペン先の状態によっても変わります。新しい万年筆を使うときに、何度か試し書きをしてみて、自分にとってベストな文字の太さになる角度を見つけてください。万年筆はこの角度により、線の太さが変わるのも特徴のひとつです。誰が使っても同じ線の太さとなるボールペンと違い、使う人によって繊細に変化します。

○万年筆と紙との角度のイメージ

ペン先を立てる角度1

ひじの角度に気をつけてゆったり構える

紙との距離が近くなるほど、ひじは曲がります。ひじが曲がると、どうしてもペンにかかる力が大きくなります。力を入れて書く人ほど、紙に近寄って書いているものです。万年筆を使うときの、ひじの理想角度は90度。試しに90度を保つように構えてみましょう。背筋が伸びて、紙との距離が適度に離れます。前傾姿勢は、それだけ腕が曲がり、力も入り気味になります。毛筆ほどではないにしても、筆圧をかけずに使う万年筆には、ゆったりとした姿勢が必要です。万年筆のどこか優雅なイメージは、使う人の姿勢にも関係しているのかもしれません。

万年筆をひねり気味に持つとどうなる?

極端にひねるとペン先がひらく原因に!

基本的な万年筆の持ち方としては、ペン先の刻印が使用する人から正面に見えるように持ちます。この角度が適正でないと、インクがうまく出ないため、線となりません。刻印の向きは、持つ人の腕の角度や癖によって、必ずしも真正面でない場合があります。試してみて、一番自分の手にあったポイントを見つけることが大切です。
万年筆のペン先は、良く見ると2つに割れています。2つに割れた部分が紙に対して平行にあたるようにします。斜めにひねったまま使うと、ペン先がゆがんで開いてしまったり、片側だけが極端に擦り減ったりします。

ペン先を立てる角度2

割れたペン先がねじれないように注意しよう

ペン先の割れた部分にはそれぞれ、ペンポイントと呼ばれる耐摩耗性の固い球状の金属がついています。ペンポイントはよくしなる金のペン先を守り、筆致をスムーズにしています。この2つのペンポイントが同じように紙に接しているのが、ねじれのない状態です。万年筆は慣れてさえしまえば、それほど難しく考える必要はありません。しかし、基本的なペン先の構造を知っておかないと、せっかくの万年筆を傷めてしまうこともあります。ペン先が正しく紙に当たり、筆圧がかかることなくなめらかに滑る、それが理想的な筆致となります。

万年筆の持ち方を矯正するには

握らずにつまむ、が基本

万年筆の持ち方がうまくいかない場合、少しずつ矯正をしていきましょう。しかし、自分の癖を無理やり変えていくことは、大きなストレスとなります。正しいと言われているスタイルが誰にも合うというものでもなく、使うペンによっても異なることを理解しておきましょう。まず、万年筆の定位置の決め方から確認していきます。万年筆は握るのではなく、いわば、つまむように持つことが基本です。

    1. ペン先が机の端から少しはみ出すようにして置く
    2. 親指と人差し指で、ペン先から3センチほどの場所をつまむ
    3. 万年筆を持ち上げたら、中指で押してくるりと返す

これで、軽く指で支えるように納まるのではないでしょうか。

初心者向けの万年筆で矯正できる!

正しい持ち方については、さまざまなところで紹介されています。参考にして気をつけていても、次第にまた元の癖に戻ってしまって悩んでいる人も多いようです。そこで試してみたいのが、万年筆自体に正しい持ち方となる設計がされている商品。どれも、比較的低価格で初心者向けです。
LAMY社のサファリはペン先近くの指の当たる部分が三角になっているため、自然とねじれが矯正されます。価格はアマゾンで2500円程度です。最初は違和感がありますが、慣れるに従い、ペンの突端の正しい位置感覚がつかめてきます。同じく国産のKAKUNOにも、同様の機能があります。価格も1000円と格安で万年筆ブームの立役者となりました。また、ペリカン社のペリカーノJr.は、ドイツの小学生のファースト万年筆として開発されています。やや太目のボディと特殊グリップで、自然に正しい位置に指が納まる工夫がされています。

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