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万年筆 が高価なのは、ペン先に使われている金が一因となっています。最近、次々に発売されている低価格の万年筆では、鉄ペンといわれるスチール製が主流です。鉄ペンは金ペンとどのような違いがあるのでしょうか。ここでは鉄ペンについてその寿命や、特徴、金のペン先との比較などを見ていきましょう。

万年筆の鉄ペンにはこんな特徴がある

細かな文字には鉄ペンの固さがベスト

一般的に万年筆の持ち味は、柔軟性のある金ペンでこそ表されると言われます。そのため高級万年筆のほとんどが、18金、21金などのペン先を使っています。鉄ペンは金ペンと比較すると、弾力性に欠け、やや筆圧が必要です。万年筆としてはマイナスを思われるこれらのポイントは、小さな紙面に細かな文字を書く場合には逆に利点となります。従来の万年筆は、ボールペンと比較すると、小さな文字ではにじみやすい傾向にあります。金ペンと比べると、ややカリカリとした書き味の鉄ペンは、この問題がクリアされます。

調整の必要がないと言われる鉄ペン

鉄ペンは安価だけに、初心者向けと思われていることが多いようです。しかし、十分に万年筆を知り尽くした人の中にも、最近の鉄ペンを評価する声が多いようです。金ペンはその柔らかなペン先の特性から、調整を希望する場合もあります。筆圧を必要としない一方で、自分の手に合うまでに多少時間がかかるようです。鉄ペンはその硬質さから、誰が使ってもあまりぶれを感じず、調整なしでもストレスなく利用ができます。

○鉄ペンの特徴

  • ニブ(ペン先)が小さい
  • タッチが固め
  • インク流量が少なめ
  • 細い線がかきやすい
  • 金ペンと比較すると丈夫で壊れにくい

万年筆の鉄ペンの寿命はどれくらい?

耐融性は飛躍的に向上している

万年筆に金が使われる理由は、インクが酸性であるため通常の金属では融解してしまうからです。昔の鉄ペンは寿命が短く2~3年で使えなくなることもありました。現在は「鉄」とはいえ、合金技術の発達で耐融性のある合成スチールが使われています。そのため飛躍的に寿命が延びていると言われています。それでも、金ペンがメンテナンス次第では、半永久的なのに対し、鉄ペンの寿命は長くても10年程度と見られています。安価な万年筆で、最初からペン先を自分で交換する前提の商品があります。簡単に交換ができるのであれば、鉄ペンのペン先は消耗品として考えることができます。

劣化や金属疲労も起こりやすい

インクによる溶解以外でも、弾性に乏しい鉄ペンは劣化を起こしやすい性質があります。たわみのできる金ペンと違い、筆圧が直接ペン先にかかり筆記時の衝撃が負荷となります。金と比較して金属疲労も起こしやすく、突然ペン先が折れるという場合もあります。弾力が乏しいため強い筆圧を続けていると、すぐにペン先が割れてくる可能性もあります。硬いということは、それだけ力の逃げ場がなく、もろいことにもつながります。金のように衝撃で曲がることは少ないようですが、使い方で寿命がかなり変わってくるようです。

万年筆の鉄ペンと金ペンを徹底比較してみよう

鉄ペンでも一定価格以上のものは想像以上に優秀

鉄ペンというと、どうしても低価格商品のように思われがちです。しかし、1万円以上の鉄ペンもありますし、逆に同価格の金ペンもあります。鉄ペンでも価格の高いものは、やはり書き味がかなり優れています。金ペンほどの柔軟性はなくても、スムーズな筆致で、日常使いでストレスを感じません。手帳など小さな文字を書く場合には、鉄ペンが有利です。一方、金ペンには万年筆らしい、筆致の強弱があり、鉄ペンでは味わえない文字を書く楽しさがあります。万年筆に親しむのであれば、早めに金ペンと併用し、使い分けをすることをおすすめします。

金ペンと鉄ペンのメリット・デメリット比較

メリット デメリット
金ペン ・柔軟性があり味のある文字が書ける
・自分の手に馴染んでくる
・メンテナンス次第で半永久的に使える
・長時間筆記でも疲れにくい
・価格が高い
・インクの流量が多め
・細かい文字が書きにくい
・筆記が安定しない場合がある
鉄ペン ・安価で気軽に使える
・小さな文字が書きやすい
・すっきりとした書き味
・比較的品質が安定している
・金属疲労・劣化がおこりやすい
・硬質な書き味
・腕が疲れやすい

残念ながら高価な金ペンだからと言って、すべてが高品質で安定しているとは言えないようです。むしろ、より工業製品的な鉄ペンの方が安定した品質と言う人もいます。特に最近になって次々に発売されている国産の鉄ペンは、価格以上の満足感があります。万年筆は使う人やシチュエーションによって、選択するべきもの。場面に従い、金ペン・鉄ペンそれぞれの持ち味を楽しむのが理想的です。

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